五月雨・序
「今年もやってまいりました皆さん大好き!!」
『後夜祭!!』
司会のハイテンションなムードに体育館が包まれる。
今年もやるという、『恋冠』というコーナー。
好きな人に冠の二つ付いたストラップを渡す。
それを受け取った相手は自分のをあげたらOK、あげなかったら失敗となる。
ちょっとシュールな恒例行事。
モテる人とかはいくつもストラップを持っている。
その姿はお見舞いに貰った千羽鶴に似ている。
「今回のミス高校は~?誰だぁ!?」
『3・2・1!!』
“パァン!!”
クラッカーが鳴り響く。
紙吹雪が髪の毛に纏わり付くけど、受賞者は涙を流したりにこやかでいたり様々。
卒業までずっと言われるから人気のコーナーだった。
「……のにな。」
「え?」
「ううん、何でも。」
最近高橋は言いかけてやめる。
それがなんともじれったくて最近イラつく事が多い。
「では、恒例の~?」
『恋冠!!』
皆がいっせいに立ち上がる。
見ていると凄い黒山の人だかり。
まあ、金も時々。
何だか熱気に包まれて熱い体育館の隅に皆で逃げた。
いつもアタシはこういう行事を避けている。
「付き合い立てカップル発見!!」
そう、こういう風に騒がれたくなかった。
だから、逃げてたんだと思う。
今年も、宗助には渡さない。
逃げじゃない。
そう信じたい。
「…………。」
でも、騒がれない方法をこのとき思いついた。
多分上手く行けばアイツだけに伝わる言葉。
帰りにやってみよう。
君に、けして気付かれぬように。