五月雨・序
“ジュー……。”
携帯をいじりながら食事をする。
行儀が悪いのは分かっているけど、見せ付けたいのもあったのかもしれない。だから見せる、家族への反抗。ただ、理解してほしいだけだった。
「遥、携帯しまいなさい。」
「うーん……。」
「もう。」
「なんなの、アンタは、馬鹿みたいにスネて。」
また出てくるあの人の声に、睨む事しかできなかった。この人に反抗したらアタシが怒られて深みにはまっていく。それが分かってた。
「何よ、その目は。」
「別に。」
食事はいつもつまらない。
食事は楽しいものじゃない。
アタシはそう思っていた。
この辛さは、自己を痛めても消えない。
もう、やった事はわかってる。
『アタシ、一人暮らししたいな。』
『何で?』
紗江に漏らした一言。
『カッコいいでしょ?』
『何だそれ~。』
本当は、紗江に言いたかった。
紗江なら、分かってくれる気がしてたから。
守ってくれる気がしてたから。
でも、言えなかったよ。
アタシ、臆病者だから。
その後で、泣いた。
自分、馬鹿みたいだって。
ずっとずっと一人で泣いていた……。
どうしたら、幸せって見つかるの?