五月雨・序

“チロリン。”

入ると同時にメロディーが流れてくる。
温かい店内が安心させてくれる。
でも、おでんの臭いキツイかも……。
あ、他の人にとっては匂いなのかな?
やっぱりアタシは好きになれないなぁ。

「いらっしゃいませー。」

にこやかなバイト店員。
良いなぁ、アタシも早くバイトしてみたい。
でも、お父さんが許さないだろうな……。
聞こえてくるメロディーに雑誌を立ち読みしながらも耳を澄ませていた。好きな人、出ないかな?って、いつも聞いちゃう。

“♪♪♪”

??

「もしもし?」
“俺~。線香花火とねずみ花火、どっちが好き?”
「線香花火、かな?」
“は~い。”

“ガチャッ。”

持ってきてくれるのかな?
ちょっと楽しみかも。
ねずみ花火って、余ったんだろうなぁw
あれ結構怖いしね。

「……あ!」

雑誌に載ってる大好きな俳優。
やっぱりカッコいいなぁ……。
並木公輝君。
ミーハーだって言われるけど、しょうがないじゃん、カッコいいんだし。ねえ?
何だかいつもと違う雰囲気の服装にまたときめいちゃうよな~。何だか顔熱いし!!

「いらっしゃいませ~。」

店員さんの声が聞こえて振り返った。

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