あなたと月を見られたら。
傲慢さのない、素直なまっすぐな視線をぶつけられると正直戸惑う。あの頃とは違う、ひたむきな目を向けられるとまるで違う人に愛を語られているような錯覚を起こす。
そんな時……ああ、この人は過去の彼とは全く違う人なのだ、ということを思い知る。
「龍聖が変わった、っていうのはわかる。でも…また無視されるのかと思うと耐えられない。」
でもやっぱり最後の扉を開くのは怖くて。まっすぐに私を見据える視線を避けながらそうつぶやくと
「何?無視って。俺、付き合ってた時そんなこと一度だってしたことないよね?」
龍聖からは不満げなそんな言葉が飛び出してくる。だから…私はフルフルと首を振って
「私はね?自分の気持ちを無視されたくないし、本当の自分を無視したくないの。」
ずっと胸の中でくすぶり続けた気持ちを龍聖に向かって吐き出し始めた。
「…どういうこと?」
「私はね?龍聖。二年前、あなたのことが大好きだった。好きで好きでそれしかなくて、本当にあなたに溺れてた。だけど…そんな気持ちをぶつけると龍聖は凄くめんどくさそうな顔をしたよね。」
「……。」
多分龍聖は本当の“無視”と勘違いしてるんだろう。だけど私が言ってるのは気持ちの問題。
付き合ってる頃の龍聖は好きの気持ちの大きい私を扱いに困っていたフシがある。
『結婚は人生の墓場』
『束縛はめんどくさい』
『一緒にいると疲れる』
それらの言葉はそんな私への牽制球だった気がしてならない。