あなたと月を見られたら。
これ以上、愛を重くするな。
そんな無言の牽制。龍聖は決して口に出しては言わなかったけれど、それを私はヒシヒシと感じていた。
「私はもっと龍聖と一緒にいたかったし、もっと龍聖のこと好きって言いたかった。でも…龍聖はそれをさせてくれなかったでしょう?」
言わせてくれない、は聞いてくれないと同義語だ。吐き出すところもなく、我慢するばかりの気持ちはどんどん心の底で膿んでいって自分の心を蝕んでいく。
私は…そんな思いを二度としたくない。
今の龍聖を知りたくて。麻生さんに言い負かされるのが悔しくて、こうして龍聖と会っているけれど、流されて付き合うのはやっぱり嫌だ。
「私は自分で自分の気持ちを無視したくない。もっと言えば龍聖に無視もされたくない。だから……ごめん。」
まっすぐに私を見据える龍聖。その視線を受け止めることができなくてうつむいたまま断ると
「そんなの…やってみなきゃわかんない。」
「え??」
「それって美月の想像の範囲内の俺だろ?本当にそうなのか、そうじゃないのかなんて、試してみないとわかんないと思うんだけど。」
そう言って龍聖は繋いでいた右手をさっと離して、ワイングラスに手をつけた。