あなたと月を見られたら。


血のように濃くて、味のどっしりした年代物の赤ワイン。それを喉に流し入れると


「俺はね?美月。フラれるならフラれるで、別に構わないんだよ。」


龍聖はそんな言葉を吐き出す。


「え??」


驚いて思わず顔を上げると


「付き合ってみてさ?やっぱり俺に我慢できなくて、ごめんなさい!ならアリ。だけどね?見てもいない、やってもいない、勝手な想像の中で判断されてフラれるのだけは俺はごめんだね。」


龍聖はフフンと意地の悪い笑みを浮かべながら、こんな悪魔な発言を繰り返す。


「い、いや、だからね…??」


話聞いてんの?!この人!
お試しでもなんででも嫌だって言ってるじゃない!付き合うこと自体がイヤなんだってば!!


論点が明後日の方向へ飛んで行った龍聖の思考回路を元に戻そうと、チョイチョイと空を手招きすると


「どうせフるつもりなら、今日からお試しで付き合ってみてよ。」

「は、はぁ?!」

「それでダメならスッパリキッパリ諦めるからさ?」

「やだ!」

「イヤも嫌も好きのうちってね。安心しなよ。俺、今回は金はないけど愛はあるから。」


ニッコリと微笑みながら龍聖はこんな頭の痒いことを言いはじめる。


コイツー!
どの口が言うか!
龍聖のどこに愛があるっていうのよ!アンタは悪魔よ!愛のない悪魔よ!私はあんたの正体をよく知ってるんだからね!!



「ふざけないでよ!
龍聖には愛なんてどこにもないじゃない!」



だから私は別れたんだよ?
だから私は次は優しい人と恋するって決めてるの! 今さら…都合のいいこと言わないでよ!



< 102 / 223 >

この作品をシェア

pagetop