あなたと月を見られたら。


龍聖の態度にイラッときて、声を荒げて怒っていると


「そんなの…試してみなきゃわかんないだろ?」

「はあ?!」

「なんでもかんでも先入観で決めつけないで欲しいね。二年前の俺と今の俺は違うんだから。」


相手は何食わぬ顔をして、フフンと微笑みながら赤ワインをさらに喉に流し込む。その態度に心底腹がたって


「ふざけないでよ!龍聖は『愛してる』だなんて死んでも言えない人のくせに!!」


私は机を両手でバンっと叩いて立ち上がると、酷い言葉を龍聖に投げつけてしまった。


しまった。言いすぎた。


そう思ってしまっても、もう遅い。お母さんのことでトラウマがあって『愛してる』という言葉を死んでも言いたくない、そんな言葉には何の意味もない、と言い切っていた龍聖。


彼はその言葉を心の底から憎んでいることをわかっているくせに…私はあんな酷い言葉を投げつけてしまった。彼を言い負かしたくて、彼を無性に傷つけたくて絶対に言ってはいけない言葉を言ってしまった。


内心動揺しながら、必死にそれをひた隠しにしながら龍聖のことを睨みつけていると


「うん。俺はきっと『愛してる』って言葉は口に出しては使わないだろうね。だけどね?その代わりになる言葉なら世の中にはいっぱい溢れてると思うんだよ。」


龍聖は涼しい顔をして、私の目をまっすぐに見据えてきた。

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