あなたと月を見られたら。
「育ちがいいというか純粋培養というか…とにかくアンタ人が良すぎる。そんなんじゃ悪いオトコに騙されまくるよ??」
その言葉に妙に冷静になってきた、私。
た、確かに…。あの時点で無理やり逃げ出して、龍聖の電話も何もかも着信拒否して、時期が来るまでやり過ごしていたら…今すぐに本を返す必要もなかったのかもしれない。付き合わずに済んだのかもしれない。
でも…借りパクなんて思いもよらなかった。玲子先生の手元にあの本を残すためには自分が犠牲になって、龍聖と付き合うしかない!!そう思い込んで、それしか方法はないんだと思っていたのにーーっ!!
「ど、どうしよう!麻生さん!!」
悪魔の術中にまんまとハマっていたことに今更ながらに気づいた私が真っ青になって救いの手を求めると
「うーーーーん、諦めな?恋愛は騙されて、流された方が負けなんだよ。」
悪魔の弟は私の肩をポンポンと叩く。
そんなぁ!
涙目になりながら懇願するように彼を見つめると
「ま…本当に嫌なら、のらりくらりと付き合い続けて無難に3ヶ月を過ごせばいいんじゃない?友達以上恋人未満の関係でプラトニックにさ?」
私の肩に手を置いたまんまニッコリと彼は微笑む。
プラトニック…??
「ま、早い話が茶飲み友達で終われ、ってことだよ。カラダの関係は絶対持たずにさ?会話と軽いボディタッチだけで、のらりくらりと3ヶ月間を持たせたらいいじゃん。銀座のホステスみたいにさ?」
カラダの関係を持たずに……??
ハハッと陽気に笑う麻生さんに、ドンドン顔色が悪くなってきて海より深い後悔に苛まれ、ドーーーンと思いっきり落ちていく私。うわぁー!と頭を抱えて落ちる私を見て
「ね、ねぇ。」
「……。」
「まさかとは思うけど…まさかとは思うんだよ?牧村さんに限ってそんなことは絶対にない、って思ってるんだけどさ??まさか……まさか龍聖とヤッちゃった!!……とか……ないよね??」
疑うような視線を恐る恐る浴びせながら、麻生さんはしどろもどろに私に尋ねる。