あなたと月を見られたら。


私はきっと誰かにこの行為を肯定して欲しかったんだと思う。自分の意思が突き通せなかったことと、拒否し続けてきた龍聖に簡単にカラダを許してしまったことが後ろめたかったから。


だから…たずねた。


「ねぇ、龍聖。」

「ん??」

「私のこと好き??」


好きだから、愛があるから抱かれたんだ、と思いたかった。



懇願するようにたずねた質問は

「……当たり前でしょ?そうじゃなきゃ、簡単に抱いたりしない。」

大事な言葉をはぐらかしたまま、都合のいい言葉で返される。だけど最後に小さな声で


「好きだよ、美月。」


欲しかった言葉、あの時は絶対に言ってくれなかった言葉を龍聖がくれたから、それだけで嬉しかった。それこそ涙が出そうなほどに嬉しかった。照れて少しはにかむ彼を愛しいと、心底思った。


だから…少し常識的にはナシな行為だったけれど、コレはコレでよかったのかな?なんて思っていたのに…それも悪魔の術中だったんだろうか!!


テーブルの上で突っ伏しながら、いろんなことを考えていると


「や、ヤッちゃったんだ…。」


目をまん丸にしながら麻生さんがポツリと呟く。


今更隠しても仕方ないと思ってコクリと小さく頷くと『ええーーっ?!!』と大きな叫び声を上げた後


「まぁ……やり方はどうであれ、兄上様も今回ばかりは本気ってことなんだろうなぁ。」


麻生さんは感心したようにそんな言葉を口にした。


< 114 / 223 >

この作品をシェア

pagetop