あなたと月を見られたら。
あぁーーー!!やっぱり時期尚早だったんだ。きっと流されて、龍聖の思惑に乗せられて、簡単にヤラれちゃったんだ。
龍聖の本気、ってヤツはよくわからなかったけれど、自分が簡単に龍聖に操られていたことはよく分かる。
うう!私のバカー!!!
あんなに龍聖には警戒心をむき出しにして、近づきすぎないようにバリアを張って、扉を固く閉ざしてたっていうのに…。なんで最後の最後で心の歩行者天国をオープンしちゃったんだろう。あの場面でこそフンドシを締め直さなきゃダメだったんじゃんー!!
ばかー!!
私のバカー!!!
自分の馬鹿さ加減とゆるさ加減が情けなくって、心底辟易していると
「意外と牧村さんも龍聖のこと好きだったんだねえ。」
麻生さんはこんなわけのわからないことを言いはじめる。
その言葉に驚いてバサッと顔を上げると
「だってさ?牧村さんって基本、潔癖っぽいし、好きじゃない相手なんかには絶対にヤラせなそうじゃん。どっちかといえば恋愛に無駄に夢を見てるタイプだしさぁ??なんたって頭の中に妖精さんが住んでいるわけだし。そんな女の子が簡単にカラダを許すって…よっぽどのことなんだと思うんだよね。」
麻生さんはウンウンと納得しながらこんな言葉をつぶやきはじめた。
無駄に恋愛に夢見てる、とか基本潔癖、とか、頭の中に妖精さん、とか。なんだか失礼な言葉を羅列した麻生さんに抗議の声をあげそうになったけれど…
「好きだから抱かれたんでしょ?」
「…へっ?!」
「じゃなきゃ…アンタみたいなタイプは簡単に寝たりしない。龍聖のことが大好きだからカラダを許した。そうじゃない??」
麻生さんは涼しい顔して、私が見ないふりをしていた核心部分に足を突っ込む。その言葉を聞いて、ここまで出かかっていた抗議の声がウグッと音を立てて引っ込んだ。