あなたと月を見られたら。


それを思い出したら、急に怖くなってきた。龍聖に心を許してしまったことも、カラダを許してしまったことも何もかも。


「私は…、私は龍聖なんて好きじゃない!」


脅されて仕方なく付き合ってるだけなんだから!!好きでもなんでもないんだもん!!私は……龍聖なんてこれっぽっちも好きじゃない!!


認めたくなくて、本当の自分に向き合いたくなくて、またあんな風に傷つけられたらと思うと怖くって、首をブンブンと横に振りながら必死に否定をすると


「強情だね。」


麻生さんは龍聖によく似た涼やかな声で呆れたようにつぶやく。


「まぁ、今すぐ認めろ、っていうのも無理な話だと思うけどさ?いずれは素直にならないと傷つくのは自分だと思うよ??」


彼の言っている意味がわからなくて首をかしげると


「自分を歪めて、無理して納得させてもちっとも幸せじゃないよ、ってこと。後は自分で考えな?子どもじゃないんだから。」


そう言って、麻生さんはメンチカツサンドをがぶりと頬張る。



素直に……か。



「怖いこと言わないでください。」



メンチカツサンドと時間差で運ばれてきたエビアボカドサンドを頬張りながら抗議の声を上げると



「バーーーカ。人生は成功と失敗の連続だから、失敗するのを怖がってる奴は一生成功なんてしやしないんだよ。甘えんな。」



麻生さんはニッコリ天使の笑顔を浮かべながら、こんな悪魔な一言を口にする。


でたでた。


なんだか久しぶりに見た気がするデビル麻生が懐かしくってクスリと笑うと


「まぁ…傷つけないでやってよ。難しいところのあるアニキだけど……よろしくお願いします。」


そう言って、私に向かって小さくペコリと頭を下げたのだった。


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