あなたと月を見られたら。
龍聖と(お試しで)おつき合いを始めて1ヶ月が過ぎた。
どうせ飽きたら捨てられるんでしょ?今回はどれくらい持つことやら……。
少し冷めた目で、冷めた心で龍聖とは向き合っていたけれど、ことのほか龍聖は優しくて、毎日マメに連絡をくれるから…戸惑ってる。
朝起きた時、お店が暇になった時、夜寝る前、龍聖は暇な時間を見つけて、せっせとメールを送ってくれる。既読無視にメール無視。着信無視を貫いて、自分の都合のいい時にしか連絡をくれなかった2年前とは大違いだ。
それに…デートも庶民派になった。
昔は高級ホテルの高級ディナーの後、お部屋で行為にふける…っていう繰り返しだったけれど、この前はね?代々木公園にピクニックしに行ったの。
お互いにお弁当を持ち合って現地集合。私はフルーツの盛り合わせとエビとアボカドと卵のサラダに、冷茶。龍聖は唐揚げと卵焼きとスパムおにぎりを持参してきてくれた。
木陰にシートをひいて「傷んじゃうといけないから」と、二人で慌てて食べたお弁当はどんな高級ディナーよりも楽しくて美味しくて、素敵だった。
こんなデートが龍聖と出来るだなんて思ってもみなくて
「龍聖、こういうの嫌いだと思ってた。」
シートに寝そべって空を見上げる彼に語りかけると
「確かに興味はなかったかな。でも…意外と楽しいね。」
龍聖はニッコリと微笑む。
「正直、他人の作ったメシを食えるかどうかが、不安だったけど…美月のは平気だったから安心したよ。」
だけど、悪魔はちゃんとオチも忘れない。