あなたと月を見られたら。
龍聖より少し年上に見えるその人はモデル顔負けの体型と美貌の持ち主で、身につけているモノ全てが高級そうで…何よりも手に持つバーキンのゴールドがとてもよく似合っていた。
「お疲れ様、龍聖。
相変わらず、そのスーツがよく似合うわね。」
「そう??」
「ええ。ゴルチェのスーツ、私が見立てたモノよね?龍聖のセクシーさが良く出てて…とても素敵。」
そう言って龍聖の唇にそっと人差し指でセクシーに触れた彼女を見て、ハッと思い出した。
『龍聖ってオンナの趣味が変わったのね。』
2年前、龍聖とこのホテルでディナーを食べていた時、値踏みするような目で私を頭からつま先までジロジロ見て、侮蔑するように言い放ったオンナ。あの人…あの時のオンナだ!!
『龍聖ともあろう男が、何でこんな低レベルのオンナと付き合ってるの?』
まるでそう言っているかのような目つきで私を見ていた、あの人。私の中の劣等感を刺激して、やっぱり私と龍聖は釣り合ってないんだな、って強く認識させられてしまったあの事件。
あまりに嫌な記憶すぎて忘れてたけど…目の前で龍聖にベタベタ触れているあの女の人の顔は、忘れたくても忘れられない。間違いない。あの人はあの時の女の人だ。
それがわかった瞬間、、、私はもっともっと不安になった。
なんで?
どうしてその人と一緒にいるの?
その人と一体何してたの?
どうして未だに連絡取ってるの?
もしかして、こんな風に会ってるのって私だけじゃないの??他にもたくさん関係を持ってる人がいるの??
もしかして…私は龍聖が遊んでる、その他大勢の女の人の1人にしか過ぎないの…??
もしかして……また私、騙されてたの??
ついこの間、公園でピクニックをして膝枕で眠っていた彼が遠くなる。目の前に起こっていることが信じられなくて、信じたかった彼は雲の彼方に消えていく。
代わりに目の前に現れたのは
『美月といると疲れる』
2年前、ひどい言葉とひどい態度で傷付けた、最低最悪だった彼だった。