あなたと月を見られたら。
違う…違う、違う!!
そう信じたいけど不安になる。
手が震える。
顔から血の気が引いていく。
心が押しつぶされそうなほど苦しくて、2年前に龍聖に傷つけられた自分が「そら見たことか。」と顔を出す。
龍聖が生まれ変わった、と思ったのは私の勘違いだったのかな。あの日「早く楽になれ、って言ってやりたい」って言った龍聖もカフェで楽しそうに働く龍聖も、あのゆったりした時間を過ごす龍聖も全部全部ウソだったのかな。
私をスキだと言って、抱きしめてくれた龍聖もあの言葉もあの仕草も全部全部ウソだったのかな。
そのスーツ、何?
また仕事に戻るって何??
急用って…何だったの??
苦しい。
浅くしか息することが出来なくて、胸の奥が悲鳴を上げそうに苦しくて苦しくて、このまま意識がフッとなくなりそうになった時
「ごめんね、美月ちゃん!
おまたせ!!」
笑顔を爽やかに振りまく玲子先生が現れた。
「あ、、、。」
いけない!!
シャンとしなきゃ!!
今、私はお仕事中…!!
乙女モードの自分を無理やり胸の奥に封印して
「お呼び出しありがとうございます。先生、何飲みますか??」
「そうねぇ…、ブレンドかな。」
「わかりました。では注文しますね。」
一気に自分をお仕事モードに切り替えて、無理して冷静を装ってブレンドコーヒーを注文すると
「ねぇ、美月ちゃん。
顔色悪くない??」
玲子先生が心配そうに私の顔を覗き込む。
玲子先生は…職業上カンがいい。
人の動向や心の動きに敏感で、観察力があるからこそ人の心を掴む素敵なお話を書けるんだ、って尊敬してるけれど…ココだけは誤魔化しきらないといけない。