あなたと月を見られたら。
最悪……。
こっちはブルーになるけれど、私の存在なんて知らない二人は言いたいだけの龍聖への文句を口にする。
「リュウセイは気まぐれダロウ?今は楽しくても、すぐに飽きてこっちの世界に戻ってくるサ。」
「そうかしら。」
「そうだヨ。ほら…昔もあったじゃないか。少し毛色の違うオンナノコと付き合ってた時が。」
「ああ…あったわね、そんな時。」
侮蔑したようにつぶやく、美女のその言葉に背筋が凍る。彼女はブレンドコーヒーを二つ注文した後
「笑えるのよ?あの時は私の夜の誘いも断るようになっちゃってね。私の誘いを断ってまで会いたい女が、どれだけいい女なのか見に行ったら…全然大したことないの。300円くらいの安い下着つけて満足してるようなチンケなオンナだったのよ??」
美女は上品にオホホと笑って、オジサマ上司もアハハと笑った。
それを言われた瞬間。
彼女たちがネタにして笑ってるチンケな女は私のことなんだと直感で察知して…逃げ出したいほど恥ずかしくなった。
300円の下着なんてつけてないよ?だけど……きっとこの人のつけてる下着には敵わない。
だって、頭からつま先まで高級そうなアイテムを身につけたこの人と、普通のOLの私じゃ、格が違うんだもの……。
龍聖と特別な関係を持っているであろうこの人と私。誰が見たって…龍聖にお似合いなのは私じゃなくてこの人だ。