あなたと月を見られたら。
きっと龍聖のこと、この人は好きなんだ。その人から見れば私なんて取るに足らない存在で、自分の邪魔にしかならない『チンケな女』なんだろう。
そんなことを考えてると自分が惨めで、情けなくて、もうこのまま消えてしまいたい気持ちになってくる。今にも泣き出したい自分を必死に抑えて戦ってると
「キミが心配しなくてもリュウセイは帰ってくるサ。あの時だって『追いかけてる時はよかったけど、捕まえたら捕まえたでつまらない。』って言ってたじゃナイカ。」
「まぁねぇ。
龍聖は狩人気質ですものね。」
「ソウソウ。追いかける時は必至だケレド、捕まえたら次の獲物を狙うオトコ、それがリュウセイだとボクは思うよ?今も新しい恋愛ゴッコに夢中みたいダケド……。」
「ま、飽きて私のところに戻ってくるのも時間の問題よ。」
二人は傷ついてる私になんて気にもしないで、楽しそうにアハハと笑いあう。
ピクニックなんて衛生的に不潔よ。そんなこと死んでもゴメンだわ、だとか。そういえば一度も外食もしてないらしいわよ、とか。そんな付き合い、今は楽しくてもそのうち飽きるわよね、だとか。それを喜ぶ女のランクもたかがしれてるわよね、だとか。
好き勝手言われて、二人に散々笑い者にされてる私。そんな自分が惨めで可哀想で、たまらない。
ねぇ、どうして??
どうしてこの人に私のこと話してるの?私はこの人のことなんて何一つ知らないのに……どうしてこの人にこんな風に言われなきゃいけないの??!!
沸いてきたのは強い憤り。
もう…、もうここにはいたくない!!
逃げ出したい気持ちが我慢の限界を超えた私。近くにあった伝票を持って立ち上がりサッと会計を済ませてロビーで電話をしていた玲子先生に
「先生、すみません。
やはり体調が悪いので失礼させてください。明日、ご自宅にお伺いします。」
そう言って深々とお詫びをして…逃げるようにその場を去った。