あなたと月を見られたら。
ヒドイ、ヒドイ、ヒドイ!!
なんで見ず知らずの人にあそこまで言われなきゃいけないの?!
普通の恋がしたくて、普通のデートがしたくて、お金をかけなくても愛のあるデートがしたい、って思う私の方がおかしいの?!
カッコよくなくていい。お金なんて困らない程度にあればいい。地位も名誉も何もいらない。だけど誰よりも優しく、誰よりも自然体で柔らかな龍聖でいて欲しい。そんな彼がとても好き。とても好きだったんだよ。
だけど…
そう望む私の方がおかしいの??
あの人たちの言う通り、龍聖の本質は2年前のあの頃のまんまで…今は良くてもすぐに飽きて…私なんて捨てられちゃうのかな。
そう考えると我慢していた涙が瞳の奥のダムを超えて溢れるように流れ出す。こんな自分を見られたくなくて、大通りから必死に走って人気の少ない路地に逃げ込む。
「う、う…ひっく。」
涙が溢れて、最低な気持ちに苛まれて、出したくもない嗚咽が止まらない。
私…バカだ。
こんな時にハッキリわかるなんて。
ずっと気づかないふりして見ないふりしていた、無視してた自分の気持ちに対面した瞬間……こんなに傷つくハメになっちゃうなんてバカだ。バカだよ、私。こんな時に気づかされるなんてバカすぎる。
私……ね??
私は……龍聖に恋してたんだ。
2年前の龍聖じゃなく
お金も地位も何もないけれど、優しくて、穏やかで、自然体で…誰よりも美味しいコーヒーを上手に淹れるあの人がたまらなく好きだった。
優しい声で「美月」と呼んで、優しい目で微笑んでくれるあの人が、誰よりも、何よりも大好きだった。