あなたと月を見られたら。
ドロドロした気持ちと共に受信ボックスを開くと
《ごめんね、美月。自分から断っておいて悪いんだけど…今から会えないかな。》
あの頃と同じような自分勝手なお誘いメールが目につく。
ハァ、とため息を吐いた後
《ごめん、今日は無理。》
絵文字も何も入れずそう返すと
《そっか、残念。用事が意外と早く終わったから会いたかったんだけどな…。じゃあまた改めて美月を誘うね。ワガママ言ってごめんね、美月。》
龍聖からはこんな優しいメールが返ってきた。
それを見た瞬間、わからなくなった。
最後のメールに見える、優しい龍聖を信じたい。でも…あのスーツ姿の冷徹な龍聖が彼の本来の姿なんかじゃないか、と疑う自分も否定できない。
私は携帯を握りしめると意を決してこんなメールを送った。
《今日の急用って何だったの??》
これで…彼が本当のことを打ち明けてくれたなら。丸の内のイルクォーレホテルにいた、と正直に言ってくれたなら、私は彼を信じられる。そう思った。
なのに……
願いを込めて送ったメールは
《豆の仕入れでゴタゴタがあったんだよ。結局はずっと自由が丘にいたから…なんか損した気分。》
しばらく時間を置いた後、嘘と共に返ってきた。
なんの悪びれもなくサラリと息をするように自然に、何気なく返されたウソに、私はまたショックを受けてしまった。
龍聖は2年前もこうして私にウソをつき続けていた。好きじゃないくせに私を繋ぎ止めて、仕事でもないくせに「忙しい」と言って何度も何度もデートをドタキャンしてきた。
信じたい。
あの龍聖を信じたい。
彼は変わったんだ、と信じたい。
だけど……
『愛してるなんて気持ち悪い』
そう言ってバカにするように、侮蔑するように見つめた彼の瞳が邪魔をする。
こんな風に龍聖を試すようなことして、いいことなんて一つもない。そうわかってるクセに…不安で不安でたまらなくて私はまた彼を試すような言葉を彼に送ってしまった。
《ねぇ、龍聖。私のこと、好き??私のこと…、愛してる??》