あなたと月を見られたら。
こ、こわい!!
笑顔なのに怒ってる!
天使の笑顔の奥にどす黒いオーラがドヨドヨ出てる!!
まさに悪魔に睨まれたカエルの図の私。いつにない麻生さんの様子に怯えつつ
「な、なんのことですか??」
白々しくしらばっくれると
「龍聖から電話があった。牧村さんと連絡つかない、って。」
「あ……。」
「思い当たるフシはあるけど意味がわからない、って言ってたよ。まぁ、100歩譲って無視するのはいいけどさ?理由くらい言ってやりなよ、子どもじゃあるまいし。」
麻生さんはそう言って、グラスに入ったお水をクイッと喉に流し込んだ。
そりゃ…そっか。
麻生さんと龍聖は双子だもんね。
探りくらい入れても当然か……。
そんなことを思いながらも
「ゴメンなさい。理由は言いたくありません。」
そう頭を下げると麻生さんは「ハァ?!」と眉間にシワを寄せる。
「龍聖が何かをしたから逃げてるとか、避けてるとかじゃなく……価値観が違う、って気づいたんです。」
「ハァ??」
「お互いがウソつきあって、嫌なことは見ないふりして付き合うなら…最初からなかったことにしたほうがお互いの為かな…って思って。だから、これと言った理由はないんです。」
あの日決めた、自分の生き方、自分の方針。あの事件の全てを語ったところで麻生さんには、お説教されることが目に見えてる。だから結果だけを伝えたんだけど……
「で??」
「え??」
「お利口そうな理由に正当な御託並べるのはいいけどさ?そんなのチンケなプライド守る為のチンケな言い訳にしか聞こえないんだよ。」
「そ、そんなこと…!!」
「そんなことあるだろ??
大の大人が情けない。牧村さんって…いいオンナだと思ってたけど、そう見せかけてるだけのつまんないオンナだよね。」
麻生さんは諦めるでもなく、冷たい瞳をしたまんま私をギロリと睨んできた。