あなたと月を見られたら。
チンケな言い訳
つまんないオンナ
その言葉が2年前の龍聖、そして私をバカにしたように笑うあの女性とかぶって一瞬にしてあの時に気持ちが逆戻りする。
息が止まる。
手先にじっとりとした汗がにじんできて、動悸が止まらない。
麻生さんはそんな私に気づかないふりをしてため息を吐くと
「そんなんだから、龍聖に飽きられるんだよ。」
「…え……??」
「勝手に自分自身を納得させて、相手に言いたいことも言わずに我慢してYESマンになっちゃってさ?挙げ句の果てに勝手に白旗あげて逃げ出して。そんなオンナ飽きられて当然じゃん。めんどくさいし、つまんないんだよ、アンタ。」
2年前の龍聖もビックリするほどの冷たさで、彼はそう言い切った。
めんどくさい。
つまんない。
飽きられて当然。
麻生さんの言った言葉が頭の中でリフレインする。隠れてた、逃げ出してた弱い自分がつまみ出されて、攻撃されて、頭の奥が発狂しそうになる。
つまんない。
めんどくさい。
飽きられて当然??
うるさい、うるさい、うるさい!!
そんなこと…自分が一番よく分かってる。だから、、だから逃げたんじゃん!そうなる予感がしたから…傷つく前に逃げたんじゃん!!
卑怯なのは分かってる。
意気地なしなことも100も承知よ!
だけど…しょうがないじゃん。
怖いんだもん。
裏切られたらと思うと怖いんだもん。
だから…だから龍聖から逃げ出したのに……
今更私の傷を掘り起こさないでよ!
非難するなら…呼出なんてしないでよ!
生まれたのは龍聖への申し訳なさでもなんでもなく、デリカシーのない麻生さんへの強い怒り。
「言いたいことはそれだけですか?
それなら私、かえります。」
「は??」
「私は私の意思でそうしてるんです。龍聖の弟であれ何であれ、他人にどうこう言われたくはありません。」