あなたと月を見られたら。
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玲子先生から『今日会えないか』と連絡が届いたのは麻生さんとランチを食べ終わってお店を出てすぐのことだった。
今から自宅に来て欲しい、と言う玲子先生にこの間の無礼な態度を謝って「今からお伺いいたします」と返事をして電話を切ると
「ちゃんと手土産持って行きなよ?」
相変わらずブスッとしたままの麻生さんがプイッと横を向いたまんま、こんなことを言い始める。
「玲子先生は涼屋(スズヤ)のミニどら焼きがお好きだから、買って行きな。あとお好みの金澤茶房の棒茶も添えてね。」
「、、え??」
助け舟…だよね?コレ。
目線なんて一切合わせることなく、明後日の方向を見つめながらボソボソとアドバイスをくれる麻生さん。そんな彼が可笑しくてププッと吹き出しながらお礼を言うと
「…ま、これは俺の勝手な独り言ですから、お礼なんて言われても困りますけど??」
だなんて、可愛くないことを彼は言い始める。
ーー素直じゃないんだから。
子どもみたいに意地を張り続ける麻生さんに
「それでも…ありがとうございます。玲子先生の和菓子のお好みはまだ知らないままだったので、嬉しいです。」
素直にお礼を言うと
「……あっそ。」
彼はぶっきらぼうにそれだけを答える。
ーーもぅっ!!
そんな可愛くない態度に腹が立って
「ま、、、コレも私の独り言ですから、勝手に相槌打たれても困りますけど??」
麻生さんにやられたまんまの手口でやり返してやると、麻生さんは一瞬だけ目をギョッと見開いたあと
「…ホント……いい性格してるよね、牧村さんって。」
呆れたようにそう笑った。