あなたと月を見られたら。
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銀座のデパ地下にある涼屋のすずドラは一口サイズの小さなドラ焼きで、皮はモチモチ、あんこはアッサリ。とっても上品なお味で試食させていただいたら、その美味しさに驚愕!!本能の赴くままに、勢いのままに何個も食べちゃいたくなる、悪魔の魅惑に満ちた甘味だった。
ーーう〜ん、さすがは玲子先生。
美味しいものをよく知ってる。
わたしは玲子先生への手土産用と自宅用を二つ買って、銀座線の電車に乗り込み渋谷を目指した。昼下がりの電車の中は意外と混んでいて学生にサラリーマン、中には仲良さそうに手をつなぎながら座っている、おじいちゃんとおばあちゃんもいる。
派手じゃなくて構わない。
あんな風に年齢を重ねてもおたがいを思い合えるパートナーに出会いたい。
そのためには龍聖みたいに愛のない男はお断り。
そう…思ってた。
傷つきたくないから、傷つけられたくないから龍聖の言い分なんて耳を傾けずに、せーの!で一目散に彼の前から逃げ出した。
臆病で、弱虫の私は彼に傷つけられることが一番怖かったんだ。
『つまらないから、別れよう。』
『他に好きな人が出来たんだ』
そう言われることが何より怖くて、何より辛い。だから…真実にはフタをして逃げ出したんだ。結局さ?どんな強がり言ったって、どんなに取り繕ったって、それって…弱虫の卑怯モノの行動だよね。
麻生さんの言葉で目が覚めた。
ちゃんと…彼に向き合おう。
傷つけられることは怖いけれど、ちゃんと真実を目の前から受け入れて、今度こそちゃんと彼に向き合わなくては。
車内でくつろぐたくさんの人たちを見ながら、そう私は決意していた。