あなたと月を見られたら。
お花をみながら感慨深そうに話す玲子先生を見ながらこう思った。
作家さんには作家さんなりのイマジネーションの高め方があるんだなぁ…。
って。
誰にも生み出せないモノを作ろうとしてる人ってやっぱり感性が豊かなんだろうな。目から見るもの、感じるもの。もっと言えば空気の匂いなんかにも敏感な玲子先生を見ているとそんなことを思う。(まぁ…玲子先生の場合はイケメン好きでもあって、恋多き女でもあるわけだけれど。)
お花を見ながら2人でポーっとしていると
「ま、こんなところで立ち話もなんだからリビングに来て?新作の冒頭の部分を読んで欲しいから。」
玲子先生はニッコリと微笑んで、私を家の中に手招きをする。その言葉に甘えて「失礼します。」そう言ってお部屋の中に入ると、そこには品のいい調度類に囲まれたリビングが現れる。
ガレのランプに棚に飾られたバカラのグラス。どこをどう見たって高価な家具に囲まれて、毎度のことながら緊張する私。
ーーう、うう!
多分…このグラス一個で私の給料の1/3は飛んでいくよね…?!このテーブルを傷つけたら、修理代っていくらなんだろう!!
そんなことを考えていたら身動きひとつできなくてオロオロしていると
「美月ちゃん、緊張しなくていいからこっちにいらっしゃいな。ちょうどワインゼリーを作ったところだから一緒に食べましょう?」
玲子先生はそう言って私を手招きする。
言われるがままにダイニングに移動して、これまた高そうな猫足の白いダイニングテーブルの椅子に腰掛けると玲子先生は私の前に香り高いコーヒーと鮮やかな赤い色をしたワインゼリーをポンっと置いた。