あなたと月を見られたら。
私……バカだ…。
大バカだ。
《ねぇ、龍聖。私のこと、好き??私のこと…、愛してる??》
龍聖は絶対に言わない、とわかってるくせに送ったメール。龍聖がその言葉をどんなに嫌がってるか知ってるくせに、私は龍聖を試した。
自分のことが好きなのかどうか。自分だけは特別なのかを確かめたくて、私は龍聖にあんな思いやりのないメールを送ったんだ。
《ねぇ、何、あのメール。》
そう言ってカンカンに怒っていた龍聖。愛してる、だなんて一言も口にしなかった、あの人。
きっと彼は誰にも言わない。
好きだ、とは言うけれど《あなたは特別です》と同義語の《アイシテル》は死んでも言わない。きっと彼はその言葉を憎んでる。口にすることはおろか、それを感じることすら嫌悪している。きっとそうにちがいない。
そう…思っていたのに……
今日は月が綺麗ですね。
《あなたを愛しています》
今日は月が綺麗だね。
美月と一緒に見たかったな。
《あなたを愛しています。
美月とずっと一緒にいたかったのにな。》
俺はね?きれいな月を見ると美月をいつも思い出してた。“月を一緒に見たい”と思うのは…やっぱり美月しかいないんだ。あの頃も…そして今も。
《愛したいと思うのは、やっぱり美月しかいないんだ。あの頃も…そして今も》
彼がくれた沢山の言葉。あの時は龍聖が何を言っているのかさっぱりわからなくて、首をかしげるばかりだったけれど…その言葉の奥に隠れた本当の意味を知って、彼の気持ちに気付いて胸が張り裂けそうな程に苦しくなった。
バカだ…。
私、バカだよ。バカすぎる。
どうして今の今まで気づかなかったんだろう。彼が伝えてくれていた I love you.に。
何度となく、何度となく、伝えてくれていたその言葉、そのサインに、どうして私は気づくことができなかったんだろう。