あなたと月を見られたら。
「金もない、肩書きもないアンタにあるのなんて顔だけじゃない!どうせ店やるならこんなしょぼくれた喫茶店なんかじゃなくって、その顔の生かせるホストクラブにしなさいよ!」
な、なんですってぇ…??!!!
そこまで聞いて、私の堪忍袋の緒は音を立ててプツリとキレた。
これは龍聖と彼女の問題なんだから、私が口出しするのは間違えてる。それはわかってる。十分すぎるくらい、わかってるんだけど…
気がついたら私はゆらりと立ち上がって
「あの……、黙って聞いてりゃ随分好き放題言いますね。」
「は??」
「お金がなきゃ龍聖はダメな男って…あんまりにもひどすぎやしませんか?今の言葉、撤回してください!!」
私は彼女に向かってこんな言葉を投げつけていた。
だって…ひどくない?!
男の人の価値観ってお金じゃないもん!ハートだもん!どんなにお金を持っていても、そこに心がなければ何も持ってないのと同じことだよ!
人の価値観はお金の量じゃなくて、どう生きるか、だ。お金にまみれて生きるんじゃなくて、限られた時間の中で豊かな愛に包まれる生き方の方がずっとずっと尊くて、ずっとずっと価値のあるものだ、と私は思う。
だからこそ…お金が全て、だなんて自分の価値観とは180度違う酷い言葉を浴びせた彼女が許せなかった。
「は??あなたには関係のないことでしょう??」
でも腹が立っているのは同じことだったみたい。突然声をかけた私が、相当頭に来たんだろう。美女は蛇のように冷たい視線を私に浴びせる。