あなたと月を見られたら。

「な、何ですって?!」


美女はみるみるうちにその美貌を歪めて、醜い表情になっていく。



ずっと…
私は自分を誤魔化し続けていた。龍聖に恋する自分を必死に隠して、認めないフリして、彼を疑い続けていたんだ。


だって……
彼は言葉、という確かなものを決してくれなかったから。


甘い微笑みも甘い抱擁も2年前と同じもの。どんなにベッドの中で優しくても、変わったように見えても、彼の本心なんてわからない。


美女が言うように彼は誰にも本気になんてならなくて、誰も愛せない人なんじゃないか……って……疑ってた。


本気になって傷つくのが怖いから、見ないフリしてた。裏切られることが怖いから、気づかないフリして、自分の気持ちを誤魔化し続けてた。


だけどね??
このヘビ女と対峙して「龍聖の気持ちなんて、どうだっていいや!」って初めて思えたの。


龍聖が迷惑がろうが、私の勘違いだろうが、もうなんだっていい。とりあえず金の亡者のこの女の人が許せない。龍聖にぶつけたあの言葉を撤回してほしい!


私の心の中にあるのはそればっかりで「傷つきたくない」とか「龍聖は私のこと本当に好きなの?」とか、いつも頭の中を支配していた龍聖の気持ちはどこにもなくて、自分の気持ちだけが先に立ってた。
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