あなたと月を見られたら。
「あーっ!!」
なんてことすんのよ!
思わず伸ばした手は
「いいよ?取りたいなら取っても。だけどあの棚のコーヒーカップってこの店でも一番高いヤツばっかなんだよねー。」
「…はい??」
「この棚さあ?ビンテージのカップが山ほど入ってんの。一個割っただけでも美月の給料の三分の一はアッサリなくなるけどそれでもよければ取れば??」
「ぐ、うぐぐぐぐ…。」
龍聖の卑怯な一言によって動きを封じられる。
龍聖のお店のカップが高いのは昼間に来た時に確認済み。ただでさえいい値段のするカップばかりなのに、更に高くてビンテージ、なんて言われるとさすがの私も怖くて手を伸ばせなくなってしまった。
卑怯者ー!!
心の中で叫びながら、忌々しい気持ちを必死に押し殺しながら龍聖を睨んでいると
「フフっ。この勝負は俺の勝ちだね。
じゃあ美月はそこに座って?
今コーヒー入れるから。」
龍聖はニーッコリと微笑むと、私にカウンターの一席を指差した。