あなたと月を見られたら。
む、ムカつく!
あの勝ち誇った顔!二年前と変わらない『俺の言うことなら、何でも聞くだろ?』って態度が腹がたつ!
龍聖のいいなりになんて絶対になりたくない。あの頃の自分に戻るなんて絶対にお断りだ。
サッサとボールペンを奪い返して家に帰りたい。かと言って、あのデンジャラスな棚の中からペンを取り出す勇気なんて、これっぽっちも持ち合わせていない。
…………はぁ。
ってことは……悔しいけど。めっちゃめちゃ悔しいけど、ここは大人しく龍聖の言うことを大人しく聞いておくしかない…。
「じゃあ…一杯だけね。」
「うん??」
「コーヒー一杯だけ飲んだらすぐ帰る。」
いいなりになるのが悔しくて。せめてもの抵抗を見せて龍聖に指定された席に腰を下ろすと
「了解。じゃあ今すぐ入れるから待ってて。」
龍聖はあの頃と変わらない、満足気な笑顔を向けてコーヒーの準備に取り掛かった。
コーヒー豆の香ばしい香りと、コポコポというお湯の沸く音。それにカチャカチャと食器が触れるカワイイ小さな音。いろんな優しい音が耳に聞こえて心の奥がホッとする。
閉店後のカフェってなんだか不思議。今日、玲子先生と座った席は明かりが消えてて真っ暗なのに、私と龍聖のいる、このカウンターだけがほのかな明かりに包まれている。
龍聖のお店をキョロキョロと見回しながら、そんなことを思っていると
「カップは何にする?」
龍聖は突然そんなことを聞き始める。
カップ?
カップかぁ…うーーーん。
「ティファニー以外ならなんでもいい。」