あなたと月を見られたら。
そして最後の最後でお騒がせをし、私を恥ずかしい勘違いのるつぼに巻き込んだ龍聖の母、佐伯塔子さんは…
「龍聖〜!
また会いに来たわよ!わかってるだろうけど、、、私のことちゃーんと満足させてよね??」
相変わらず恋人なんだか母親なんだかよくわからない態度で私をいつもドギマギさせる。
驚いたことにね?
塔子さんの職業は人材派遣会社の社長さん。そしてスティーブは龍聖と勤めていた会社を辞めてその補佐をしている、補佐役であり、プライベートでは良きパートナーでもあるらしい。
人材派遣…といえば聞こえはいいけど、要は優秀な人材をヘッドハンティングして他社に紹介する、仲裁役。
どうやら龍聖のAGファイナンスのお話もそこからもらってきたらしいんだよねぇ…。(塔子さんはデキる女、なんだよね。惚れっぽいところは玉にきずだけど。)
「ねぇ、ミッキーも言ってよー。
龍聖に足りないものは肩書きと金だって。」
でもなんだかんだで私のことは気に入ってくれてるみたいで、塔子さんとは複雑怪奇な関係に陥ってしまっている。でも…意外と嫌いじゃないんだよね、塔子さん。
そして龍聖は、と言えば相変わらずでマイペースで自己中。そんな龍聖に私は終始振り回されっぱなし。
でも…さ??
2年前とは違って我慢するだけじゃなく、ちゃんとワガママを言えたり、不満を素直に口にできたり。彼がどんなに悪態ついててもちゃんと愛してくれていることは伝わってくるから…それはそれでいいのかな、なんて思い始めてる。
そして龍聖といえば!
あのイルクォーレホテルにどうしていたのか。なんで丸の内にいるくせに自由が丘にいる、だなんて嘘をついたのか、って疑惑があるでしょう?
彼とやり直すことを決めた、次の日。いたぶられすぎて動かないカラダに唸りながら、あの日の真実を問いただすと
「それはさぁ……素直に言うとめんどくさいことになりそうだったから。知らないなら知らないで、そっちの方が美月とはうまくいくかな、って思ったんだよ。」
と居心地悪そうに答えてくれた。
どうやらあの日は塔子さんに呼び出されてスティーブと塔子さんのお仕事のお手伝いをしていただけ、らしいんだよね。
まったく。
素直に答えてくれればこんなにこじれることはなかったのに!
でも…あそこでこじれることがなければ、こうして彼と向き合い、自分の気持ちに向き合うこともなかったわけだから…結果オーライ、なのかなぁ??