あなたと月を見られたら。


龍聖と私。
2年前はあまりに考え方が違いすぎて、大好きなのに。ううん、大好きだからこそ2人の間にうまれた溝に耐えきれなくて逃げ出した私。


偶然の再会を果たしても、本心を見せない彼にずいぶん振り回されて、信じられずに臆病になっていた。


だけどね??
今はこの笑顔が、この優しさが本物なのだ、と信じることが出来る。だって…こんなに優しいコーヒーを淹れることが出来るんだもん。


食べ物は人となりを表す鏡。
こんなに美味しいコーヒーを淹れられて、こんなに美味しいケーキを作ることが出来る龍聖は…きっと内面もそんな風に美味しく変わってるに違いない。と信じてる。


私と龍聖。
関係はといえば相変わらずだけど…毎週木曜日。彼の家で愛し合った後、彼は生まれたまんまの姿の私を後ろから抱きしめながら、こんな言葉を口にする。


「美月。今夜は月が綺麗ですね。」


皮肉屋で素直じゃない彼の最上級のI love you.


言葉が全てじゃない。それはわかっているけれど、抱きしめられながら愛の言葉をつぶやかれると…やっぱり嬉しい。気持ちも心もホンモノだとわかるから。


だから私はこう返すの。


「ありがとう、龍聖。
私も龍聖のこと大好きだよ。」


わかりにくい表現にわかりにくい返しをするとなんだかなぞなぞみたいで、むずかしい。龍聖がわかりにくいこと言うなら…私はシンプルに伝えてやる!そう、決めてるんだ。


龍聖は不安があっても決してそれを口にしない人だから…私がそうすることで少しでも安心してくれたらいいな、って想いを込めて。もちろん綺麗事だけじゃなく心の奥底ではいつか「愛してる」って言わせてやる!って野望もあるけどね。


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