あなたと月を見られたら。
塔子さんが言うところの「いい男」に極めて近い場所にいた龍聖。でもさ?俺は知ってたんだ。
自分の欲望に正直すぎるくらい正直な塔子さんの手元で育てられたおかげで龍聖は女にも何の期待もしない、しっかり愛を疑う男に育っていった。自分の肩書きに目がくらんで自分に群がってくる女をバカにだってしてるし、女の人のこと、程のいい、性欲処理班程度にしか思ってないこともよく知ってる。
だけどね?
本当は真っ白の自分だけを見てくれる女の人をいつも探してる、ってこと。ありのままの自分を認めてくれて、信じてくれて、愛してくれる、そんな母親みたいな愛情をくれる女性をいつだって龍聖は求めて、どこにいるのかもわからないその人をずっと探し続けてるってこと……兄弟である俺は、よくわかってた。
だから、龍聖にそういう人が現れた、って聞いた時は衝撃で…。ついにそういう人が現れたんだ、って喜びと、つまんねぇ、っていう呆れと、そんな龍聖は見たくないっていう自分のワガママが入り混じって
「ふーーーーん。
だけどさ?それも勘違いなんじゃないの?」
「勘違い?」
「うん。どーせ女なんて、お金が大好きで肩書きが大好きで、外見に惑わされる生き物なんだよ?今は可愛くたってそのうち本性あらわすに決まってる。」
そんな心にもないことを言ってしまった。
その瞬間。龍聖の顔が一瞬だけ影を見せたことを俺は知っていたはずなのに
「本気にさせても本気にならない。それが俺たちのルールでしょ?愛して、求めて、信じた挙句に…裏切られたいワケ?」
「優聖…」
「信じるたびに俺たちを裏切ってきた塔子さんみたいにさぁ?そのうちこっぴどく裏切られるの覚悟でのめり込むなら…いいんじゃないの?それはそれで楽しそうじゃん。」
俺はニッコリ天使の微笑みを浮かべながら、龍聖にそう言った。それが…龍聖を一番傷つける言葉だと、双子である俺は誰よりもよくわかっていたから。