あなたと月を見られたら。
「龍聖が傷ついちゃった時には、ちゃーんと俺が慰めてあげるよ。ま、その時にはバカなことしちゃったな〜、ってすっげぇ後悔してるかも知れないけど??」
あはは!と笑いながら、そんな言葉をぶつけると龍聖はハァ、とため息を1つついた後「そうだよな。」とつぶやいた。
「女の本性を痛いほど知ってる俺が、女に入れ込むなんて…どうかしてるよな。おかしいよな。滑稽だよな…。」
寂しそうにそうつぶやいた後、吹っ切れたように
「ありがとう、優聖。」
そう言って寂しそうに笑う龍聖の顔を見て、ひどく安心した自分をよく覚えている。
我ながら嫌なヤツ。
あの時の自分は龍聖を取られたくない!と思ったのか、龍聖だけ幸せにはさせない!と思ったのか、それともその両方を願っていたのか自分で自分がよくわからない。
でもさ?
その相談を受けた後、龍聖がカノジョを邪険に扱い出して、今までの女達と同じ扱いをして…挙げ句の果てには別れた結末を見て、やたらと嬉しかったんだよねぇ。
その時はそれでよくって、これでよかったんだって安心して、いつもと変わらない日常を過ごしていたけど、龍聖が上司にハメられて退職に追い込まれ。うるさいほどに龍聖に取り囲んでた男たちや、きらびやかな毒蛾みたいな女たちが、蜘蛛の子を蹴散らすように龍聖の前からいなくなった後。
俺は初めてアイツにひどいことをしたのかもしれない、と後悔し始めた。
「見ろよ、優聖。
誰もいなくなったよ?笑っちゃうよ。金の切れ目が縁の切れ目って本当だよな…。こんなに自分がちっぽけで、薄っぺらい、何も持たない人間だってこと、こうなってみて初めてわかった。」
そう言って笑う龍聖が痛々しかった。コイツをこんな風に追いやった原因の1つは俺なのかも、と思うと微かに残る良心がチリリと痛んだ。