あなたと月を見られたら。


あの時、俺が余計なチャチャを入れずに素直にあの恋を応援していたなら…龍聖の近くには「大切な誰か」がいたのかもしれない。


ひとりぼっちになることなんてなくて、こんな風に寂しく笑うことなんてなかったのかもしれない。


そう思うだけでとめどなく罪悪感が溢れてきて。龍聖に対して申し訳ない、って気持ちが初めて湧いてきて。いたたまれない気持ちになった。


だから…だろうね。
今度はちゃんと応援しよう、と思った。龍聖が選んだ子がどんな子でも構わない。ブサイクでも美人でも、センス良くても悪くても。器量好しだろうが悪かろうが関係ない。今度こそ龍聖の幸せを潰したりしないように、俺はちゃんと応援するんだ。


そう…決めてたハズなのに……。


「麻生さん。」

「ん??なぁにー?」

「相談に乗ってもらってもいいですか??すっごく小さなことなんですけど…他に相談できる人がいなくって。」



龍聖が選んだ女が同じ会社で同じ部署。しかも隣のデスクに座る、この牧村美月だと知った時、俺は龍聖の目を疑った。


牧村美月はブサイクじゃないけれど、十人並みの容姿に十人並みのファッションセンス。悪くもなければ良くもない。


仕事は出来る方だけど、見てるこちらがハッとする個性を発揮するでもない、特異な能力を持つでもない、どこにでもいるような十人並みの女の子。それが俺の感じる牧村美月だった。


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