あなたと月を見られたら。


牧村美月は一言で言えば普通。
塔子さんと比べると行動はトロイし、恋愛下手だし、普通のつまんない女。こんな女に龍聖が入れ込んでると知った時には驚愕したよね。正直。


だけど、今度こそはあいつの恋を応援する、って決めてたからね。律儀なボクちゃんは嫌がる牧村美月を連れて龍聖の店に出向いてやったり、親切ぶって相談にのってやったりしてたワケですよ。


だけど……


「聞いてくださいよ、麻生さん!
この間、私がふざけて‘高級チョコトリュフののった超濃厚チョコケーキが食べたい❤︎’って言ったら…龍聖、律儀に開発してて明日から商品化する、って言うんです!」

「へー、あっそ。」

「一個1280円もするんですよ?!
ケーキ一個が1280円!!絶対採算取れないと思いませんか?!どうしよう!どうしたら止めてくれると思います?!」



いつものカフェでブリの照り焼きサンドを頬張りながら、叫んでる牧村美月を見てると…不思議とカワイイと思っちゃうんだよねぇ…。


牧村美月はあくまで普通の女の子。
お母さんの手料理が大好き!と言って憚らないし、父の日にはプレゼントを欠かさないという優等生。


正直言って、こういうタイプってヘドが出るほど苦手だけど…コイツだけはなんか許せる。


「原価取れようが取れまいが龍聖がやりたい、って言ってんだから好きにさせてやりゃーいいじゃん。」

「でも…」

「アンタこだわりすぎ。恋人とはいえ所詮は他人なんだからさ?深入りする必要なんてないじゃん。」


その理由は…さ??


「な、なんてこと言うんですか!
必要あります!大アリです!」

「は??」

「自分の大切な人が道を踏み間違えそうになってたら助けるのが当然でしょ?恋人だとか他人だからとか…そういうのはどうだっていいことです!二の次、二の次!」


こういうところなんだと思う。


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