あなたと月を見られたら。
牧村美月は金よりも地位よりも、外見よりも権力よりも、人としての根本を大事にする女。
俺たちはさ?
幼い頃から女の欲望の塊、欲の権化みたいな塔子さんに育てられちゃったもんだからオンナには基本、何一つ期待なんてしてないワケ。
愛だ、恋だ、純愛だ、って叫んでる女はいつしか、金だ、権力だ、ステータスだ!にすり変わっていく。可愛い仔猫はいつしか獰猛で高飛車な女豹に変わる。
カレシのステータスが高ければ高いほど自分の価値は高まっていくように錯覚して、他人よりもいいバッグを持ってるだけで虚栄心が満たされる。女なんて所詮そんなもんなんだよ。どんなに純粋ぶったって、毒蛾は毒蛾。生まれついた性のサガには抗えようがないに決まってる。
綺麗に着飾る美しい蝶。だけどその内面はこの世にある汚いものが全て蠢めく、ドロドロの膿に沸いた恐ろしい毒蛾。そんなつまんないオンナばっかり見ちゃってるもんだからさー?
「1280円のケーキなんて誰が買ってくれると思います?!」
「いや、買うんじゃない?
あの辺りは有閑マダムも多そうだし、龍聖ならあのルックスと培われた手練手管で売りさばくでしょう。」
「…な、な、な、なんてこと言うんですか!ダメです!人間、楽して生きちゃいけないんです!楽して儲けても身にならないんですよ?!悪銭身につかずっていうじゃないですか!!ダメです!そんなの絶対ダメですーっ!!」
庶民の味方!
真面目一辺倒!
みたいなこの人見てると、なーんかホッコリすんだよね。
人を騙しちゃいけない、とか。楽して得して生きるなんていけない、とか。嘘はどーとか、人生とはどーとか、鼻の穴をおっきくしながら正論をまくしたてる牧村美月を見てると
「コイツ、マジでウザい。」
って感情と
「めんどくさいけどさ?
こんな風にまっすぐに、当たり前のことを当たり前に一生懸命語ってくれるって…新鮮で面白いかも。」
って思う自分がいる。