あなたと月を見られたら。
ハァ…愛のない男に愛を訊ねた私がバカだった。
「あっ、そうですか。
それは大変失礼いたしました。」
心の中でチッと舌打ちしながら、ぶっきらぼうに答えると
「何怒ってんの?」
龍聖が私の前にコーヒーカップを置く。
「別に?相変わらずだなぁ、と思っただけ。」
龍聖が選んでくれたノリタケのカップに口をつけながら悪態をつくと
「ふぅーん。」
愛のない男は興味深そうに私の顔を覗き込む。
なによ!なんなのよ!
イラつきながら睨み返すと
「美月は合わせ上手な自己主張のない女だと思ってたけど…、なるほどね。それが素かぁ…。」
「はい?!」
龍聖はさらにムカつく一言を吐き出し始める。
合わせ上手な自己主張のない女だとぉ?
言ってくれるじゃない。
っていうかそうしないとアンタとの付き合いが成立しないからそうしてただけであって、私は元来、自分の意見はキッチリハッキリ言える方なんです!
「ウルサイ。っていうか、そうさせてた龍聖にも原因があると思うけど?」
「え?俺が原因?」
「そうよ。自分のことを好きかどうかもわからない相手に本心さらけ出せるワケないでしょーが。嫌なことも我慢してその場が収まるならそうするしかないじゃない。」