あなたと月を見られたら。
龍聖からちゃーんと愛を感じられたら、あんなに卑屈になる必要も我慢する必要もなかった。好きだから嫌われたくなくて、イヤだけど我慢する。
それをしていた私もバカだけど、それをさせてた男にも原因ってあると思う。
鼻息荒く伝えた力説は
「それってさぁ?」
「なに?」
「ただ逃げてただけじゃない?」
「はぁ?」
愛のない男には何一つ通じない。
「俺はさ?美月は文句言わないから、何にも感じてないんだと思ってた。俺のワガママもドタキャンも許してくれてるし、理解してくれてるんだと思ってた。」
はぁ?!
なんじゃそりゃ!
「あるわけないでしょ、そんなこと。あんな勝手な行動についていけるはずないじゃない。」
思い返しても腹立たしい、あの頃の龍聖の最悪な言動の数々。アレを許せる女がいるのなら、是非ともお目にかかりたいもんだわよ。
一人でウンウンとうなづきながら、心の中で力説してると
「うん、だからさ?俺も美月がわからなかった。」
龍聖はこんな一言を呟く。
「何を望んでるのか、何が好きなのか、何が嫌なのかなんて言ってくれなきゃわからない。俺はエスパーじゃないんだから、何も言わない美月を察することなんて不可能だろ?だからあの頃の俺は美月は自己主張のない、つまんない女だと思ってた。」