あなたと月を見られたら。
龍聖とはもう二度と会わない。そう決めて二週間が過ぎた。
決めてしまえば、後は日々が過ぎるだけ。私は玲子先生の新作を見守り、サポートすべく毎日忙しい日々を過ごしていた。
「麻生(アソウ)さん、今度の玲子先生の新作は恋愛ものなんですけど…どうやって売り込めばいいでしょう…。」
「うーん、そうだねぇ。白石先生にはファンが多いけど、久々の恋愛ものってあたりがポイントだよね。若い女の子がよく目にする媒体を使ってアプローチする…がやっぱりいいかもね。」
そんな相談を持ちかけたのは隣のデスクの麻生さん。誠実に対応してくれて、隣で爽やかに笑う彼は2つ年上で、現在29歳。少し色素の薄い茶色い髪に180近い長身。顔も甘くて物腰も柔らかで、優しい彼は、この部署のアイドル的存在だ。
優しくて思いやりもあるくせに仕事も出来る。そんなスーパーマンの彼には当然のことながらファンも多い。
「そっかー、そうですよね。」
「うん。まぁ作品をある程度見てみないことには話にならないけど…頑張ろうね。俺でチカラになれることがあれば、何でも手伝うからさ。」
「はい!」
はぁー、いいな。こういう人。
龍聖に再会してから麻生さんの株は大上昇中。うん、やっぱり私はこういう優しい人が好きだな。
ここまでハイスペックじゃなくてもいいけど、優しくて、柔らかくて、穏やかな人がいい。
龍聖みたいな人は絶対にお断り!