あなたと月を見られたら。


私が別れ話を切り出して、彼が別れを受け入れるまでの時間はたったの30秒。そんな風にあっさりさっくり、何事もなかったかのように終わった彼との恋。


追いかけても、引き留めてもくれない、泣いてもすがってもくれない彼を見たとき、一気に恋の熱は冷めていって「あの頑張った日々はなんだったんだろう」と悔しくて涙が出てきた。


彼に泣いていることを悟られたくなくて、彼に背を向けて散らばった服を着て

「じゃあね、龍聖。
今までありがとう。」

精一杯の強がりでにっこり微笑むと

「うん。美月も元気で。」

彼は軽い感じでバイバイと手を振った。悔しいことに…その表情には一筋の後悔も見られなかった。




なんなの?!
なんなの、あの男!!!
高収入だし、高身長だし、高ルックスだし、高センス、高スペックだけど人として大事なものが欠けてない?!!


愛がない!
情がない!
人にとって大切な思いやりすらない!


バッカみたい!バッカみたい!
あんな男に熱を上げてたのかと思うと、自分が情けなくて、可哀想で泣けてくるっ!!!



「今度好きになる人は絶対に優しい人にするっ!私だけを好きでいてくれる人にするんだからーっ!!!!」



街明かりに照らされた歩道をテクテク歩きながらガオーッと吠えると、カバンの中でピロピロと携帯が鳴る。イライラしながら手に取ると、メールが一件。相手は…佐伯龍聖。


はぁっ?!
今さらなによ!


イライラしながらメールを開封すると


「今夜は満月だね。
月がとっても綺麗だよ。美月と一緒に見たかったな。」


こんなわけのわからないメールが一通。
< 4 / 223 >

この作品をシェア

pagetop