あなたと月を見られたら。


無言のまんま電車に乗って、龍聖の自宅があるという自由が丘を目指す。よくよく考えれば私は龍聖の自宅に足を踏み入れるのが初めてで、彼がどんなマンションに住んでいるのかも付き合っている時は知らなかった。


「ずっと自由が丘なの?」

気になって尋ねると

「違うよ?サラリーマンしてた時は港区に住んでた。」

龍聖はさらりと答えた。

それすら知らなかった自分は龍聖にとってどんなポジションだったんだろう。

そう思うと切なかった。



住むところさえ教えてくれないカノジョなんてカノジョじゃないよね。それこそ本当に性欲処理の道具じゃん!!カノジョというか…もはやあの時の私はセフレ…??


そう思うと、龍聖に対してまたメラメラと殺意がこみ上げてきた。


「ほんとサイテー。」

ギロリと睨んで罵ると

「ありがと。よく知ってる。」

龍聖はノホホンと微笑みながら、私を軽くあしらった。



電車の中は終始龍聖のペースで話が進み、私が怒って無言になると、龍聖は周りで座っている乗客の様子を観察していた。それはそれは楽しそうに。


いつも疲れていて、どこかイライラしてギスギスしていたあの頃とは違う。人を見下しているような冷たい瞳はどこにもなくて、柔らかでのんびりした笑顔を浮かべながら…彼は私の隣でくつろいでいた。


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