あなたと月を見られたら。
あの事件から2週間。私はやっぱり龍聖と連絡を取っていなかった。
あの後、玲子先生に資料を持って行った時、先生は龍聖から借りた本をとても喜んでくださったけれど…内心とても複雑だった。だって玲子先生がその資料を読み終えてしまったら、龍聖に会わざるを得なくなる。そうなったら私はまた2年前の、あのやりきれない気持ちに引き戻される。
それが嫌で、それが怖くて。私は玲子先生が資料を読み終わる日が永遠に来なければいいのに、なんて思うようになってしまっていた。
「はあぁぁぁぁー。」
盛大なため息を吐きながらデスクの資料を整理していると
「どうしたの?随分疲れてんだね。」
隣のデスクのイケメン、麻生さんにクスクスと笑われてしまった。
「す、すいません。私生活がゴタついてて精神的に疲れてて…!!」
ワタワタしながら言い訳すると
「私生活ってことは…もしかして男??」
麻生さんはニヤニヤ笑いながら、問いかける。
す、するどい…。
デキる男の洞察力に驚きながらも
「男っちゃ男なんですけど…。不毛なんですよ。」
この際ウソを言っても仕方ない、と腹をくくって正直に打ち明ける。
「不毛な男ってどういうこと??」
「元カレなんですよ、悩みの元凶が。愛のないサイテー極まりない男だったんですけど再会しちゃって。そこでなんと言うか……その人にわけもわからず振り回されてて…疲れちゃってるんです。」