あなたと月を見られたら。
そのあと、龍聖と私はお互いにメアドと携帯番号を交換して、普通に会話をしていた。
どーでもいい話に新作スウィーツの話、それに美味しいコーヒーの淹れ方。相変わらず龍聖は毒づくことが多くて、常識人の私は突っ込みどころが満載だったけれど…龍聖との会話は予想外に楽しかった。
龍聖のワケのわかんなさは相変わらずだけど、なんだか許せる。へんちくりんに絡まった思考回路のルーツを知れたから…なのかなぁ。龍聖の常識知らずな言動に、前よりも理解を持って接することができるようになった気がする。
うーん、なーんだろう。
結局のところ私はお人好しで、情にほだされやすいんだろうな。
あんなに許せないと思っていた龍聖にそんな過去があったって知った瞬間、過去の怒りの沸点がキュウウゥーって音を立てて下がっていってしまった。その時点でわたしは相当のお人好しなんだと思う。
でも……もう一方で自分の心の貧乏さにも気づいてしまった。もしかしたら私ってすごくイヤな奴なのかもしれないよ…。
だって、二年前よりも龍聖が近くに感じる。高学歴で高収入。一流企業に勤めてた龍聖は自分の中で雲の上のような存在で、どこか落ち着かなかった。『自分とは違う世界の人』そう思っていた。
なのに…過去に傷を持ち、なかなかお店が軌道に乗らないと悩んでいる龍聖は雲の上の場所から少し降りてきてくれて、自分により近くなってくれた気がする。
それは嬉しいことなのかもしれないけど…だけどそれって…自分の劣等感が満足してるだけな気もする。だってイケてない龍聖を見てホッとしてる、ってことでしょう??
本当、私って……性格悪い。