あなたと月を見られたら。
そんな自分の醜い想いをランチ中に麻生さんに相談すると
「ふーーーん。牧村さんって案外つまんないことで悩んでるんだね。」
「え!?つまんないこと??」
「うん。要は打算的な目で龍聖を見てしまう、ってことで悩んでるんでしょう??俺からすれば、打算しない女ってヤツがいるのなら一度この目で見てみたいモンだよね。」
編集部近くにあるカフェの生姜焼きプレートをつつきながら、何食わぬ顔して麻生さんが毒づいた。
「昔の龍聖を引き合いに出せばさぁ??高学歴、高収入ってだけでもポイント高いのに、その上あのルックス。性格うんぬんは置いといて、放っておけない好物件。女なら打算して当然なんじゃない?」
でた。麻生さんの毒舌。
最近ではすっかり慣れてしまった、この毒に
「…またそういう夢のないことを言う…。」
注文した厚切り卵焼きホットサンドを頬張りながら、軽い非難の声をあげると
「そりゃ言うよ。だって事実だもん。女の人って基本子宮で物事考えるじゃん。」
麻生さんは元も子もないことを語り始める。
「女の人ってさー?純粋に愛だけに生きてくれるのは23歳くらいまでで、30近くなると結婚相手として恋人を選ぶじゃん。好き、だけじゃなくて収入だったり、学歴だったり、本人にはあんまり関係のないところに惚れたりするじゃん?性格なんて二の次でスペックだけ見るヤツもいるしね。」
ケッと悪態をつきながら忌々しそうに生姜焼きを口に運ぶ麻生さん。
うーーーん。
この人も龍聖とは違った方向で歪んでるんだよなぁ……。
辛子マヨネーズの効いた卵焼きサンドを頬張りながら、確かに感じる悪魔のDNAに想いを馳せていると
「ま、何にせよ、いいんじゃない?性格悪くても、欲深でも、浅ましくても。女の人ってそういう業(ゴウ)の中で生きてる生き物なんだから、いやらしくて当然でしょ。」
悪魔はトドメの一言をつぶやいた。