あなたと月を見られたら。


こ、この人最近ドSすぎない?!


最近ちっとも優しくない麻生さんにギロリと憎しみの目を向けると

「教えてよ、牧村さん。」

悪魔は何食わぬ顔をしてニッコリ微笑む。


はぁ、ダメだ!
悪魔の遺伝子は強力すぎて凡人には対応できない!!



アッサリと負けを認めて

「……ナンパです。」

そう告白すると

「へぇー、牧村さんから??
顔に似合わず勇気あるねぇ。」

な〜んて、意外そうな顔をして私を見るから…


「違いますっ!龍聖にナンパされたんですっ!!私は断じて声なんてかけてませんっ!!!」


机をダンっと叩いて思わず力説すると


「…え…マジ??」


私の言葉を聞いた瞬間、麻生さんは絶句してしまった。



◇ ◇


龍聖との出会いは……有楽町のガード下の飲み屋さん。


私の友人と友人の旦那様が経営してる昔ながらの居酒屋なんだけど…友人の旦那様がカナダ人なコトもあってか、お客さんの外人さん率が高いお店で有名だったの。


いつお店に行っても満杯で、お客さんのの6割が外人さんで占められてる、ちょっと珍しい居酒屋。


二年前、そこに友達と飲みに行って…たまたま相席になって隣に座っていたのが龍聖とその仲間たちだった。


私は女の子二人組。龍聖は会社の上司二人と同僚と一人の四人組。少し普通と違っていたのは龍聖の上司が二人とも外人さんだった、ってコトくらい。


日本語で会話する私たちに、英語で会話する龍聖とその仲間たち。


『ひゃー、住む世界が違うなー』なんて思いながら付き出しの肉じゃがを頬張っていると

「Hi!ミツキ!久しぶりだネー!」

「ジョシュ!!」

友人の旦那様。つまりはこのお店のオーナーに声をかけられた。


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