あなたと月を見られたら。
子どもか!!
その姿はまるでガキンチョのようで、いつも穏やかで大人な麻生さんからは、想像もできない姿。そんな彼を見て思わず「ぷっ」と吹き出すと
「そんなに気になるなら龍聖に直接聞きなよ。」
麻生さんは愛のない男に接触しろ、と指示し始めた。
「でも……」
龍聖を誘って喜んでくれたことなんて、過去には一度だってなかった。デートはいつだって龍聖のペースにしか合わせられなかったし、私が誘ったところで「忙しい」の一言で済ませられるのがオチだった。
だから…龍聖に自分から連絡を取ることには、ひどく抵抗がある。
またあんな風に断られてしまうんじゃないか。あんな風に不機嫌になっちゃうんじゃないか、って思ってしまう。私にとっては、彼と連絡を取ろうとすること自体、物凄くハードルが高いことなんだけどなぁ…。
ハァとため息を吐いて、もう水っぽくなってしまったアイスティーをストローでクルクル回すと
「大丈夫だって。今度簡単に断るようなら、それこそ見切りをつけてサヨナラしちゃえばいいんだからさ。」
そう言って麻生さんはニッコリ笑う。
「え??」
「楽に考えればいいよ。いわば今はお試し期間でしょ?誘ってokならそれでよし。誘ってダメならそれまでなんだから…深く考え過ぎたらバカみるよ?」
うーーーん。
この人、サラッと発した言葉にいちいちトゲがあるなぁ…。
そんなことを感じながら、どうしたもんかと思案にくれていると
「ま、俺は牧村さんからの誘いは十中八九、龍聖は絶対に受けると思うけどね。」
ニヤリと笑って麻生さんは残りのアイスコーヒーをグイッと喉に流し込んだ。