あなたと月を見られたら。

本当かなぁ……
過去のことがあるから、イマイチ龍聖のことは信用できないんだよなぁ…。


麻生さんに後押しされているにも関わらず、龍聖と連絡を取る気にはならなくてため息ばかりを吐いていると、麻生さんは

「ごめん、ちょっとスマホ貸してくれない?ニュースチェックしたいんだけど会社に忘れちゃってさ。」

そんなことを言い出した。



自分のカバンの中から携帯を取り出して、彼に「ハイ」と渡すと彼は忙しそうに指を動かしている。


お仕事かなぁ…


そんなことを思いながら呑気に彼の行動を見つめていると


「大丈夫だってさ!」

「はい??」

「今日、龍聖空いてるって。店終わった後ご飯食べよう、って言ってるから今日仕事終わりに龍聖の店に行きなよ!」

「はいーーーっ??!!」


悪魔は笑顔のまんま、こんな恐ろしいことを言いはじめる。


ちょ!ちょっと!!
さっきのはニュースチェックじゃなくて、龍聖にメール打ってたのーー?!


っていうか…本人無視して勝手に話を進めないでよ!!バカーーッ!!


プライバシーの侵害よ!プライバシーの侵害っ!!!


無体なことをする悪魔に軽い殺意を抱きつつ

「なんてことするんですか!!」

苛立ちの声を上げると

「だってさー?グズグズしてんの見てて腹立つんだもん。」

悪魔はなに食わぬ顔をしてフフンと微笑む。


「やるならやるで、決めるとこは決めなよね。中途半端は見苦しい。」



勝ち誇ったように言い切る悪魔に、ウグググと悔しがる私。


そうだけど!
それはそうなんだけど!!



心の中で反論していると

「悔しいなら直接龍聖に問いただす勇気を持ってから出直して来なよ。俺、日和見主義で幸運は空から降ってくると思ってるオンナ…正直ムカつくんだよね。」

悪魔はさらなる毒を撒き散らし始める。

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