あなたと月を見られたら。
「だって…信じられないよ。
今の龍聖は素敵だと思うけど、同じ過ちは繰り返したくない。」
そうだよ。
またあの苦しみを味わうのかと思うとゾッとする。龍聖の心が見えなくて、いつもどこか遠慮してて、嫌われるのが怖くて、言いたいことも十分に言えない。そんな後ろ向きな自分に戻るのかと思うとゾッとする。
もうあんな気持ちはお断りなの。あんな卑屈な自分になるのは絶対にイヤ。
見えない愛に悩んで、苦しんで、龍聖の気持ちばっかり探って、我慢する自分にはなりたくない。そんな一方通行で寂しい恋愛はもうごめんだもの。
ハァとため息を吐いて龍聖から視線を外すと
「美月は今の俺を見てくれないんだね。」
「…え??」
「あんな思いはもう沢山。信じられない。それは今の俺を見て判断してることじゃない。言ったよね?俺は価値観が変わったんだ、って。過去の自分とは違うんだ、って。」
龍聖は私の指を掴む力をさらに強くさせる。痛みにも似たその圧に耐えかねて顔を歪めると
「どうやったら信じてくれる?どうやったら…今の俺を見てくれる?」
龍聖はまっすぐに私を見つめながら、そんな言葉を聞いかけた。