美園君は、お化けの癖に私を恋愛対象としてストーキングする。
それなのに、成長するにつれてなんとなくここから疎遠になっていた。
忙しいとか、色々理由を付けて、来なくなっていた。
ミーン、ミーンと蝉の声。
静かに聞こえる波の音。
心地よく吹き付ける、夏の風。
体いっぱいで夏を感じるみのり浜。
クーラーに囲まれた部屋にいるよりもずっと刺激的な自然に、胸がドキドキする。
もっと前から来ていればと今更になって感じた。
でも、この夏休みは────
きっと自分史上、最高に楽しい夏休みになると、そんな予感がしてたんだ。
*
「おばあちゃーん!!来たよーー!!」
築50年の、少しばかり年季の入った木造の家がおばあちゃんの思い出の家だった。
木の板に《篠原》と達筆な字で書かれた表札は、昔書道の先生だったおばあちゃんが書いたもの。
玄関前には赤いポストがあり、思わず乙女心がくすぐられる。
そして大輪の向日葵が、家の前の庭に植えられていた。
温かみのある、昭和レトロって感じの家の雰囲気に、なんとなくキュンとした。
「あらぁ、ミオちゃん。遠い所からよく来たねぇ!」
大きな声でおばあちゃんを呼べば、ガラリと開いたすりガラスの扉。
そこには、私の大好きなおばあちゃんがいた。
おばあちゃんは、名前を《篠原 みどり子》と言う。
顔をくちゃくちゃにして笑うその顔に、愛しさが爆発して。
「おばあちゃん、大好き!」
突然の告白。
それを聞いたおばあちゃんは、もっと目元に皺を寄せて、
「私もミオちゃんが大好きだよ!」と優しく微笑んだのだった。