誘惑したくなる上司の条件
なんて声をかければいいのか
正解が分かりません。
「たろちゃんは、諦められるの?」
「努力をすれば、忘れられるのかなって…」
「そんなの、悲しくない?」
たろちゃんは、口を噤んでしまった。
「私だったら…
どうしても好きなら
親の反対なんか押し切るよ?
男のくせに、それもできない、たろちゃんが他の誰かと恋をして
相手を幸せにするなんて…
私には思えない」
「かっちゃん…」
「たろちゃんなら、頑張れるよ?」
その言葉に、再会してから初めて、たろちゃんが笑った。
「かっちゃんと会えて良かった。」
「私も、自分の気持ち、改めて気づけたよ」
この縁談は無しと言うことで、世間話しに花が咲いた頃
個室の襖の向こうから
女将さんの声が聞こえた。