砂漠の賢者 The Best BondS-3
 見た目だけでどうにもならないとは決めることは愚かだということは学んだ筈だった。
 黒曜石の塊のような獣と戦った、あの時に。
 何故確認もしないで無理だと決め付けようとしたのだろう。

「キャシー、しっかり飛んでろよ、っと!」

 キャサリンに声をかけながら腕に力を籠める。
 体重を腕一本で持ち上げて、ラファエルから手を離して動物特有の臭いを放つ羽毛を掴む。
 キャサリンの上に乗り、通気溝を調べる為だ。
 だが相手は飼われているとはいえ、野性を失わぬ獰猛な鳥。
 その嘴がエナの手を狙う。

「ぅわっ」

 直に食らえば手の甲に穴が開く。
 エナは手を離して避けるほか無い。
 こうしている間にも火は回り、肺を侵食していくというのに。
 エナが焦れていると、頭の上に居たラファエルがにゃあと鳴いた。

「どうし……ラフっ!?」

 ラファエルが頭を蹴る軽い衝撃。
 エナが声を上げたときには既にラファエルは体を宙に舞わせていた。
 くるりと器用に体を捻り落ちていくラファエルにエナは動揺した。
 着地したラファエルはエナを見上げてもう一声。
 何かを伝えようとしているのだ、と感じたその刹那。

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